従業員約3万人を擁する西武鉄道グループの頂点に君臨してきたコクド前会長の堤義明容疑者(70)が3日、逮捕された。捜査の手が及ぶ中で、堤前会長は次第に孤立感を深め、身内の前で取り乱す場面も目立ったという。豊富な資金をバックに政財界、スポーツ界にも大きな影響力を及ぼしてきた「カリスマ」が落日の時を迎えた。
 東京都港区の東京プリンスホテルでは午前9時51分、正面玄関脇の荷物搬入口から東京地検の白いワンボックスカーが入り、入り口のシャッターが閉ざされた。報道陣約30人が搬入口の入り口に詰め掛け、ホテル従業員約15人がその前に立つ物々しい雰囲気。午前10時7分、シャッターが開き、堤前会長を乗せたワンボックスカーが出て来たが、運転席以外はカーテンに閉ざされ、外から車内はうかがえない。車は東京地検に向かった。
 強制捜査着手までに、堤前会長に対する聴取は2月22日以降、数回行われた。いずれも場所は東京都内のプリンスホテル。23日午後、新高輪プリンスホテルを訪れた担当検事は、従業員に先導させ、周囲の目を避けるように小走りで16階のスイートルームに入った。
 また、25日午後の聴取は赤坂プリンスホテルで行われた。スイートルームのある38階フロアのエレベーター前では、従業員2人が警備に当たり「フロアに立ち入らないで下さい」と、報道関係者を押し返すなど緊迫した空気に包まれた。
 担当検事に堤前会長はしっかりとした口調で受け答えをしたという。
 こうして聴取に応じる一方で、周辺には「こんな事態になるとは思わなかった」とも漏らした。企業グループの「総帥」から、容疑をかけられる立場への転落。捜査の手が迫る中で、おひざ元のコクド社員でさえ、冷ややかな対応を見せ始め「あまりの落差を受け入れられないでいる。今までは肩で風を切っていたんだから……」。堤前会長に近い関係者は、“墜(お)ちたカリスマ”の心情を、こう代弁した。
 小柳皓正・前西武鉄道社長が19日に自殺した直後、堤前会長は取り乱した様子を見せたものの、調べには淡々と応じていたという。
 25日に堤前会長と面会した大野俊幸・コクド社長は「手術をして体調を崩した面はあり、以前よりやせていたが、思った以上に元気だった」と、その様子を伝えた。この時、堤前会長がスキー場の営業状況などを尋ね、大野社長が厳しい状況を説明すると「ああ、そうか」とだけ答えたという。
 個人的な考えなんですけど、私は西武ライオンズが存続できるかどうか心配です。もう球団消滅は見たくないですから。